定置漁業の「いろは」

【定置漁業権の位置図】

全国の沿岸に設定されている定置漁業権(大型定置漁業)の位置図が海上保安庁の「海しる(海洋状況表示システム):
https://www.msil.go.jp/msil/htm/main.html」の画面から[+水産]⇒[+漁業権]⇒[定置漁業権 >]をクリックで表示されます。

【定置網とは】

「定置」という用語は、明治の漁業法に「漁具を定置し・・・」として規定され、「定置漁業と称するは、漁具を定置して為す漁業を謂い・・・」とされたのが始まり。即ち、一定の水面に土俵、錨(いかり)、支柱などによって固定しその敷設位置を変えない網です。

【定置漁業とは】

漁具を定置して営む漁業を言います。現在の漁業法の分類では

  1. 身網の設置される場所の最も深い部分が、最高潮時で水深27m(沖縄では15m)以上あるもの及び北海道でサケを主たる漁獲物にする漁業(だだし、瀬戸内海におけるます網漁業、陸奥湾における落網漁業・ます網漁業は除く)
  2. 網漁具を移動しないように敷設して営む漁業であって1の定置漁業権以外の定置漁業に分類されます。

この1、2は漁業権漁業といい、物件として知事の免許に基づきます。

この他、都道府県知事より許可を受けた小型定置漁業があります。前記1は、大型定置漁業と呼び、2と知事許可の定置漁業を小型定置漁業と呼んでいます。更に1の中でも北海道でサケを獲る定置漁業をさけ定置漁業と呼んで大型定置と分離する場合もあります。

網の種類は、漁場の特性や漁獲する魚種によって【定置網の分類】に示すように様々ですが、最終的に魚捕部に入った魚は、タモ網等で集められ、クレーンで取上げて船内の魚倉に収容します。通常、魚倉には氷水が張られており、取上げた魚を急速に冷蔵します。漁船は20トン未満の「網起し船」と呼ばれる船舶を1〜5隻程度使用しますが、漁場は2〜4キロの距離にあり、市場に直行した後、速やかに種類や大きさ毎に分けて箱詰してセリにかけられます。これらの一連の作業は、鮮度を最優先するため、夜明け前に始まり午前中には完了します。

【定置網の分類】

日本で操業されている定置網は地域や季節及び対象魚種により多種多様です。定置網は海の中に設置されているのでどのような構造をしているのか分かりませんが、主な定置網の網型について紹介します。

  1. 落し網類

    我が国で最も普及している網型です。垣網と身網で構成され、身網は運動場、昇網、箱網の3区分できます。来遊した魚群は垣網に誘導され網口から運動場に入ります。その後、昇網を経て箱網へ集まります。この箱網が毎日起されて魚を漁獲します。ほぼ全ての魚が漁獲対象となりますが、ブリ類、マグロ類、イワシ類、アジ類、サバ類等の漁獲が多いです。
  2. 底・中層網

    海底に接する様式で設置される定置網です。小型の網は日本各地でも見られますが、大きなものは北海道の沿岸でサケ・マスを漁獲する網として知られています。
  3. 瓢(ヒサゴ)網

    地域により、猪口網、マント網と呼ばれることもあります。落し網の仲間ですが、構造はあまり似ていません。小型の網から大型のものまであり、主にイワシ類やアジ類を漁獲する網として古くから利用されています。
  4. 枡(マス)網類

    内海・内湾や入江のような静穏な浅海域に設置される網です。囲い網(運動場)に取付けられている複数の袋に魚が入る構造です。袋には返しが付けられているので一度入ると逃げられなくなります。タイ類、スズキ、イカ、ハゼ等が漁獲されます。
  5. 網えり

    琵琶湖で見かけることがある古い歴史を持つ網です。元々は竹や柴垣で形が作られた迷路のような網でツボに集約された魚を漁獲します。今は棒(ポール)杭と網で作られます。フナ、コアユ、ハス、モロコ等を漁獲します。

page
top